着ていて安心な手織紬・佐々木愛子
真夏のほかは外出にはいつもきものを着ている私は、丈夫で着心地のよい織物を求めて、その後も次々と、いろいろの土地の手織紬を着てみました。米琉の見本となったといわれる久米島を着たいと思い、15年ほど前に沖縄に行った時、2反ほど求めて帰りました。けれどもその時の久米島紬は、とても地質が薄く、胴裏の白絹が透けて見えるほどでした。泥染の茶褐色の地に、絣のあしがすれた具合は、とてもよいのですが、地質がわるいため、羽織下でなければ着られないのです。その時、10年ほどたって求めた久米島紬は、地風、染色ともに申し分なく、大きな絣の柄が落着いた味に織り上っています。私はいまも、この久米島紬を大切に愛用しています。テーチ木の液に浸しては、泥染めをする方法を、繰り返すことで糸にふくらみと弾力が備り、織り上げた織物は、着ていると体の動きをしっかりと受け止めてくれます。はじめに求めた久米島紬は、戦後、久米島で織物が復興してから間もなくで、良質の糸が手に入らなかった時代のものと思われます。今日の久米島紬は、品質は安定し、よい織物が揃っています。私が着ていた紬の種類は多くはないのですが、自分が手織紬を着てみて思うことは、経糸が生糸で、緯糸だけに紬糸を使って織り上げた紬は、長く着ていると、布地に腰がなくなりやすいようです。経糸の生糸に、5.6本おきに紬糸を入れてある紬は、体の動きを受けとめる手応えがあり、長い時間着ていても、しわにならず、たるみも出ないと思います。ですから着ていて安心なのです。また化学染料で染めた糸よりも、植物染料で手間をかけて染めた糸で織ったものは、染めの工程で、糸がやせるものはやせてしまっていますから、その上で織り上げた紬は布味が落着いています。泥染の方法を経た糸で織った紬が、もっとも着心地がよいように思われます。新潟県の小千谷、六日町、岐阜県の郡上あたりで織られる紬には、経糸にも紬糸が入り、染めは草木染のものがあります。こんな紬は地風に深い味があり、色合は落付いていて、着ていると布味には腰があり、着心地はよく、着あきることがありません。私は日常、こんな紬をよく着ています。