打ち込みが決める紬のよさ・佐々木愛子
結城紬は、経、緯ともに手紡ぎの紬糸を使っていますから、経糸と緯糸はしっかりと組み合い、いざり機で織り上げた弾力のある地風は、人の体の動きを十分に受けとめ、それでいて体の動きに添う軽さと自由さがあります。この頃の絣結城の値段は、私の手には合いませんから、私が着るのは無地や縞の結城です。着はじめた時は、こわばったような地風が、裾まわしがすり切れる頃には、しっかりと体になじみ、身のこなしが楽で、着ているきもののことを忘れています。着ていて楽で、着くづれしないきものが第一なので、この頃は、ついつい結城を着ることが多くなりました。六日町で織られている経緯ともに紬糸で織ってある細かい蚊絣の紬は、着心地はよいことと思い、一度着てみたいと思いながら、まだ着たことはないのです。蚊絣で織り出した文様が、あまりに技巧をこらしたものが多く、地色が濃紺、黒など濃いものが多いので、なかなか気に入ったものに巡り合いません。若い頃とは違い、あまりに地色が濃いものは、顔色が沈んでだめなのです。結城紬も濃い色が多いのですが、濃い色の織物が似合うのは、50前くらいまでではないかと思うのです。また、きものは美術品ではないので、着る人をぱちぱちとはね返すような、きものの立派さだけが、きわだつような織物は好ましいとは思えません。この頃の織物には、柄が大げさすぎるものがとても多いと思います。私は外出も旅行も織のきものを着通していますので、毎年、春の終わりには何枚かのきものを洗張りして仕立て直します。とても気に入っているきものが、洗張りしたら急に腰がなくなって、くったりしてしまうことがあり、そんな時は、ほんとうに情けない思いです。昔織ってもらった紬でも、洗張りした後は頼りなくなって、今でも着たい柄なのに、着ることもなくなったものが何枚もあります。そうかと思うとはじめに作った藍無地の紬は長年、愛用しましたが、膝が抜けるまでしっかりしていました。織り上った時は、ちょっと地厚すぎると思うくらいの紬が洗張りすると好もしい着心地になるようですし、細い糸で薄手に織った紬は、はじめは着心地がちょうどよいのですが一度洗張りすると地風がやせて頼りなくなります。薄手の紬でも糸の質が優れていて、打ち込みがよければ、水を通しても風合は損わないのだろうと思います。織る時の打ち込みが甘いものは、着ていても、ぴたっとした感がないし、そうかといって力まかせに打ち込んだものも、肩が凝ると思います。私のように、仕立直した後も長く着られる紬を求める人は、今の時代ではもう少ないのでしょう。それ故、丈夫さや着心地よりは、色や柄に重点を置く織物の方が多いのだろうと思います。