紬織りに情熱をそそぐ人々・佐々木愛子
昔、農家の自家用だった手織紬が、戦後の織のきものの主流となって今日まできましたが、今、紬は一つの曲がり角にきているのではないでしょうか。20年前、私は上田紬に新鮮なおどろきを覚えましたが、今日では、あの時ほど私をひきつける織物はほとんどありません。あまりにも織物が出まわりすぎたのです。今、私が織のきものに求めるものは、丈夫で着心地がよく、澄んだ静かな色合の織物なのです。自家用に織る農家は、今はもうありませんが、今日では、昔はいなかった工芸作家たちが熱心に織物を織っています。織物を学ぶ人も多いのです。このような人達の技は、専門の職人には遠く及ばないけれど、色彩感覚、創造力は優れています。自分の織る織物で大きな収益をあげるのは、むずかしいことを知りながら、それでも織物を作り続けている人達です。この人達の作品が紬織業者に影響して、何か道は開けないかと思うのです。郡上紬などは、その一つの生き方のように思われます。幼い頃から今日まで、長い年月、さまざまな織物を身にまとってきました。その一枚一枚のきものが、人が心をこめて織り上げたものだったことを思うと、豊かな思いに満たされます。見も知らぬ作り手たちに深い感謝の思いを覚えないではいられません。