素朴で地方色のある民芸品・本吉春三郎
民芸という言葉は、今日では大変一般的なものになって、誰でも民芸品とはこんな物だという考えをもつほどになっています。民芸の言葉は、大正の末期から昭和のはじめにかけて、柳宗悦を中心として数人の、主として陶器を作る人達の間で生れた新語です。民芸普及は柳宗悦をはじめとする日本民芸協会によって、おしすすめられました。民芸の語は時運に乗じて広まりましたが、はじめ柳などの考えた範囲をこえて、大変安易拡大した解釈をされているのが現状といえましょう。しかし民芸品は、庶民大衆の毎日の生活をうるおす雑器であって、素朴で丈夫で、郷土的地方的な特色をもち、暖か味があり、その物密着した一種の美があるということは根本的な考えでありましょう。紬の着物に考えがおよぶと、私は地方民謡を思いおこします。東北の民謡、信濃や越後の民謡、また九州や沖縄の民謡、それぞれ、その土地に結びついて育ってきました。信濃の紬に伊那節や木曽節のメロディが背景となるのも自然だといえます。そして信濃路のいくつかの紬も、民芸の一つとして考えるのも楽しみです。