紬と似ているホームスパン・本吉春三郎
最近の紬の流行は、戦前すべての女性が、和服で暮らした時代にもまして盛大です。機械文明の発達によって、反動的に手織紬のよさが見直されたのでしょう。ところで、洋服地にホームスパンというのがあります。ホームスパンと紬は似かよった点が多くあります。羊毛を家庭で紡ぎ、手織で織った服地です。英国ではツイードと呼びますが、これはスコットランドのツイード河畔に産するからです。スコットランドやアイルランドは、冬期は雪が深く寒さもきびしい。それに加えて高原の土地は痩せて耕地も少ない。農民にとっては牧羊によっての生活をよぎなくされます。ホームスパンに用いる羊毛は、良種のメリノなどとちがって、ブラックフェースマウンテンと呼ばれる、顔は黒く、毛は長くて粗悪。食肉用や毛皮用として飼育されます。このブラックフェースマウンテンの毛を手で紡ぎ、手織で織ったものがホームスパンです。染料も植物染料を用いるなど、我が国の紬に類似しています。英国皇室は恵まれないスコットランドの農業政策の一つとして、冬の農閑期の家内工業としてホームスパンを奨励しました。そしてこの服地を買い上げて、日常服やスポーツ服として着用しました。これによってホームスパンの人気が上り、英国はもとより、欧米の社交界に出入りする人達にも流行となりました。スコットランドのホームスパン製造が組織立ったのは1908年ごろからですから、そんなに古いことではありません。進んだ機械製品の普及してゆく反面に、素朴なホームスパンの人気が上るのは、我が国で戦後の好景気につれて紬が流行するのとよく似ています。紬もホームスパンも趣味的に愛好され評価されるものです。