絣くくりについて・北村陵・結城紬のその分野で伝統工芸士になったらかくといった記事
設計図案が産地問屋から注文がきて、設計図案どおりに仕上げる。これが基本的なスタイルである。近年、産地問屋から注文を受けなくても、オリジナル図案を設計する動きがあったが生産者で図案かける環境を整えるにはパソコンが必要である。それからデザインソフトのPhotoshopである。Photoshopはバージョンアップしてそれについていく感じになるが現在のPhotoshopは固定の金額を月々おさめて、使用する。結城紬の図案をかく、というのは絣の仕事がどんなものなのかや糸の計算、基本技術がありそれを熟知した上でデザインを行わないとならず、一見自由に満ちた職業にみえるがじつはそうではない。むしろ技術的に抑制されている。パソコン図案化が結城紬のデザインをより高度で正確なものに変えた。パソコン図案化が導入される前は図案紙にてがきで1つ1つ絣の模様を図案紙にかいていったが、現在は簡単に修正や置き換えができるパソコン図案化が主流である。ただパソコン図案化で県の研究機関が指導したときに講習を受けなかった人が9割でごく一部のものしかPhotoshopでパソコン図案化ができないという現状もある。この頃、パソコンは40万円くらいしたしスティーブジョブズが有名になるかどうかという1998年あたりまでさかのぼる。私の父はそこに参加した数少ない技術者であり、習得者である。もっと厳密に言えば織元でパソコン図案化ができるのは私の父と産地問屋のデザイン部の職人だけである。このパソコン図案化はなにも絣に限ったことではなく縞織物や格子柄も設計することができる。私はようやく格子柄と縞織物を指導者なしで設計できるまでになった。さて本題の絣くくりであるが、結城紬の絣について述べよう。糸は絣くくりが一度にくくれる本数は80本〜100本であり、それは経(たて)も緯(よこ)も同じである、ということはふまえておきたい。つまりは結城紬の絣デザインはその基本の絣くくりが一度にくくれる本数80本〜100本になるようにデザインされていなければならない。それ以上でもそれ以下でも適切な本数ではなくこうした基本から絣はデザインされているといってもいいくらいである。絣くくりは設計図案を正しくよみとること(よみとり方が決まっている)と、それを基準に正確な墨つけ、絣くくり(防染)、という流れである。手つむぎ糸を木綿糸を唾液でしめらせくくりつけ染色し、その後にくくりつけた木綿糸をほどき、絣にしていくのである。1日にくくりつける数を決めておき無理のないペースで仕上げていくことも重要である。絣くくりはくくりつける木綿糸のチカラ加減が一定であることでより設計図案に忠実な絣ができやすいからである。無理をすれば技術的にみだれやすくなる。以前、この部門で伝統工芸士になる前に、女性には不向き、無理であるといったが全国をみわたすと女性でも絣くくりを行っている方がいる。それは吉田たすく著「紬と絣の手織技法入門」に内包されているような基礎をふまえたもので、結城紬のような精緻な絣くくりとは若干異なり、結城紬の絣くくりは女性にはできないという流れを覆すものではない。このように私がまとめてきた絣くくりの記事からあらたに書いたことは、パソコン図案化がもたらしたものとそれを支える技術者がいてはじめて絣くくりは成り立つのであって、どちらかが欠ければ生産ができないのである。私はさらに付け加えることとして、染めのたたき染めとよばれる絣をよりうきたたせる染めも技術者が高齢化でいぜん、先細りの現状を迎えている分野であるのが絣くくりである。産地問屋が不景気になると図案を出さなくなるというのをどこまで真剣に考え抜いたか、職業的な破綻は図案一枚で左右される不安定さを克服したのか、残りの9割の結城紬の絣くくり技術者に私はその問いを投げかける。以上をもって絣くくりの記述を終わる。

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