北国の民芸織物   暖かくて堅牢な紙はた織   山村精
そのほか見落とせないのは、紙はた織と琴糸織です。みちのく山形の山間部では、冬の厳しさはひとしおで、大雪に埋もれ、明治末期までは自給自足の生活を強いられていました。紙はた織は、そうした人びとの生活の知恵から生まれたものといえましょう。おそらく紙はた織が始まったのは、江戸末期ではないでしょうか。特産の三椏(みつまた)、楮(こうぞ)を原料とした上質の和紙づくりが盛んになり、江戸や京との交流の道が開かれましたが、その後のことと考えられます。紙はた織は、麻や藤蔓などの繊維を績んだ糸を経糸にし、和紙を緯糸にして織り上げたものです。この和紙は不用になった大福帳や、反古になった手漉き和紙などで、これを5mmぐらいの幅に切り裂き、糸車で撚りをかけて糸にします。こうして作った紙の糸に木綿糸をからませ、さらに丈夫にするのです。紙の持つ保湿力が生かされて、とにかく暖かい。着て暖かく、軽くて堅牢だということから昔は仕事着に用いられました。とくに漁師たちは「おころぎ」と呼び、厳しい日本海での漁には欠かせぬ仕事着だったようです。また、大正初年頃まで、日常生活の中でも見ることができました。現在では主に帯地にされていますが、手漉き和紙を紅花で染めたり、模様を色糸で縫取りするなど、さまざまな工夫が加えられています。