暖か味のある津軽こぎん 紺と白の美しい調和 大林しげる
津軽の冬は長く厳しい。それにも増して藩政下農民の耐乏生活は苦しかった。その苦しい生活のなかで農民は、温かで丈夫な衣服を願望し「差しこ着」を工夫した。いつ、誰が、どこで作り出したか、わからない。だが、それは雪深いみちのく・津軽の農村で生活の必要から生み出され、名もない農家の子女田たちの手で、幾世代にもわたって作り継がれて「差しこ」からやがて模様を刺した「刺しこぎん」に昇華した。長い冬ごもりの炉端で、暗いあんどんを頼りに、丹念に、娘たちは刺しこを刺した。待ちわびる春の温かな陽射しを恋い、邑の春祭りを思い描いては晴着を、また、リンゴ畑や野に出て立ち働く姿をえがいては仕事着を刺しつづけた。その白い手がいつの日か造型した紺地に白の幾何学模様は、見る者に無限の奥行きをもって迫ってくる。津軽の農民たちがその生活の知恵を結晶させ、そして静かにその風土から咲き出させた華であることを、無言のうちに語りかけてくる…。