<結城紬ができあがるまで>

まず始めに結城紬は文化財に指定されました。それには3つの要件が指定されました。ひとつ目が、糸を人がとること、柄は絣くくりすること、地機という織り機でおることです。
糸とりの原点

糸は袋真綿という特種な原料を使用します。蚕が繭を作ります。その時、繭をじゅうそうで煮ます。蚕が蛾となってしまうと繭の中でふんをしたりしてよごしてしまいます。そのため、繭になったらすぐにじゅうそうで煮込み、蚕がさなぎで繭から出る前に煮込みます。繭をじゅうそうで煮たら繭のある薄い部分から手でお湯の中でひろげ袋真綿ができあがります。そしてそれが原料になるのです。その袋真綿を糸とり道具(つくし)にかけて、人の技術によって糸が紡がれていきます。

絣くくり

絣くくりは糸をせいけいし、たばねられた糸を木綿糸でしばり、防染します。柄は細かく図案にそって括られます。図案をよみとるのも括り手には必要で図案を読み取れない人には難しく思われますが、以外と単純な法則でできあがっています。そして括りは柄ですのでタテ、ヨコとも必要になります。柄としてのこしたい部分を墨で印をつけその上を木綿糸で括り防染します。これは大変根気のいる仕事です。

地機織り

ぢばた織りが最後の要件です。地機は他の織り機と仕組みが異なり、織る人に多きな負担がかかります。日本で最古の織り機といわれています。織りは単純そうですが最後の仕上げなので気も使います。この3つの要件を満たしたものがいわゆる文化財の織物となるのです。

<結城紬 国の重要無形文化財の三要件>

本場結城紬の国の重要無形文化財の三要件は以下の3つです。
1糸とり(手紬糸をとる。

2絣くくり(手括りすること。

3地機で織る。

以下解説と詳細です。

国の重要無形文化財の結城紬
重要無形文化財と称する商品は、上記の三要件がそれぞれ本場結城紬技術保持団体の会員でなければなりません。

<詳細>

1手紬糸の作成、糸とり<手紬糸 tetsumugiito>

<本場結城紬の最良の素材手紬糸と国の重要無形文化財指定理由、手紬糸の技術と性能>

結城では一枚約2グラムの真綿を約350枚使って一反の糸を紡いでいきます。2ヶ月ぐらいかけて3万mとれます。左手の親指と人差し指を使って真綿を引き寄せ、唾液をつけた右手で捻りをくわえ手元にしごいていく。手紬糸は撚りのない無撚糸(むねんし)なので空気を含み、機械ではできない多彩な風合いを生み出します。本場結城紬のやわらかな触感と渋い光沢の秘密は、手紬糸にあり、生地がやさしく、飽きがこない。子や孫の代まで着継ぐことのできる結城紬の命は、まさに手紬糸にある。<手紬糸の作製技術は国の重要無形文化財として指定されています。本場結城紬重要無形文化財指定理由三要件その一。技術指定。><北村陵>現在、糸とりは近所のおばさんに頼んでおこなっていて、その形式が途絶える事無く続いています。糸とりは家内制のため、これといって命の危険は無い仕事ではあり、昔副業で農家の方が冬場におこなっていたということが今も続いて今に至っています。太さは取り手によって違い、織元は太さでどこの糸に使うかを決めます。またその賃金と手間を考えると趣味でとっているという方がほとんどで、後継者が不足してます。

<手紬糸の説明>

本場結城紬の生地は手紬糸という真綿(まわた)を<つくし>という伝統工芸士の作る職人道具によって、人の力と道具の工夫によりつくられます。生糸は、複数の繭(まゆ)から一本の糸を作り出し撚りがかけられ回転がかかっています。これが生糸の特徴です。それに変わって手紬糸は真綿(まわた)、つまり繭(まゆ)を重炭酸ソーダで煮込み一枚の袋の形となり(袋真綿>ふくろまわた)の状態からつくしにかけ、人の唾液と力で紬ぎ出されます。その手紬糸の作成までを説明し、現在、本場結城紬<国の重要無形文化財>の素材、絹の手紬糸の製作までを紹介します。 

 右にみえる道具が伝統工芸士によって作成された<つくし>といわる糸とり道具です。素材は竹を中心に、きびがまわりにつけられており、人の力でぶれないようにおもりがついています。

左が袋真綿(ふくろまわた)です。右が袋真綿から人の力で紬ぎ出された手紬糸です。
つくしという糸とり道具から<おぼけ>という道具に手紬糸をおぼけにためていきます。
手紬糸の生産者は高齢の方が主で、日常の暇をみて今までえんがわなどで、本場結城紬<国の重要無形文化財>の指定前からいとなまれてきました。今、生産者の中でも細く紬げる方が不足しています。産地が縮小とともに高齢化も進み、素材の生産の不足も危惧されています。作製者の紬ぎ出す糸は帯にしか使用できない太さです。糸の太さはデニールという単位で割り出され、市場にでます。一枚の袋真綿が2グラムで94グラムを一ボッチという単位と計り方で取引されています。
手紬糸の後継者も不足の声がある。2008から糸とり開始を行なった。
軽くて暖かい生地は人の力によって生産されています。
手紬糸
ボッチ揚げという工程をふみ、綛(かせ)になる。写真は作製者の紬いだ手紬糸256D。
写真左が<つくし>といわれる道具。昭和初期の手紬糸の風景写真<北村しわ>
手紬糸は、紡がれた後ボッチ揚げという工程で糸を扱いやすくします。<写真はボッチ揚げの工程>
平成11年4月手紬糸のよさが新聞に掲載される。日本の伝統である。この良さを守ってゆくことが大切だと痛感。
2008年秋、つくしの道具作りを行なった。2008冬より手紬糸の製作も自ら行なうようにした。帯に手紬糸を使用する。
生糸/大島紬 手紬糸/結城紬、本場結城紬 手紡糸/結城郡織物(石下結城紬)
特徴/性能
糸扱い
糸扱い 均等で比較的扱いやすい ややまばらで扱いにくい ふしこぶがあり、たて糸にするときれやすく織りも困難。扱いにくい
価格 生糸の相場 反物一反10万円で高価 手紡糸機械による相場
性能 糸は手紬糸と違い、光沢がある。すべすべした触り心地 ざらざらした触り、軽くて保温性に長けている。使うほど光沢がでる。 手紬糸に似ているが仕立てあげた後徐々にざらざらしていく
糸性質 蚕が吐いた糸を束ねて撚り(ひねり)が掛けられている。 真綿から人の力により国の技術指定をうけ高度な技術がいる。手紬糸は生産者も限られる。 糸が機械で紡がれていること、糸のでこぼこ、など。場合によって生糸と混ぜて紡がれる。撚り(ひねり)がかかっている。<参考>北村織物では扱っていません。茨城繊維指導所協力撮影。

2、柄作り <絣くくり KasuriKukuri>

<絣くくり(手くびり)Kasurikukuri> 柄は細かい防染の連続でできている。<重要無形文化財3要件の一つ>
国(日本)の重要無形文化財指定の工程です。絣くくり、とはあまり耳にしない言葉かもしれません。キモノの柄作りの仕事です。職業的にあまり普及しておらず先祖代々伝わる柄作りの技法です。絣括り(かすりくくり)とよび、防染(絹糸に染料がしみ込まない様に細かい作業で色がしみ込まない様にする)する作業で、国の指定工程に登録されている技術です。様々なくくりにより木綿糸の太さを変えて、亀甲など代表される模様の作成を行ないます。男性の仕事として普及していました。今は数えるくらい職人が減っているという職人の現場で私は仕事をしています。市内で私の世代のあととりは職業を変え、同じ世代の括り手は私しかいません。地味な作業地道な作業で根気が必要です。その家柄と伝わった家系により、口に唾液で括る方法と指と手先だけで行なう括りがあります。それ以外の捺染方法は国(日本)の文化財指定をうけていません。茨城県工業技術センター繊維工業指導所 所長より、海外流出の可能性が低いとの指導、監修頂きました。
下記写真は国(日本)の指定工程の技術です。国の指定技術その壱
一部茨城繊維指導所所長監修一部公開2008.Ryo Kitamura 五代 北村 陵

図案にそって竹べらで墨を付け、その上をくくる。その前の工程

<これが日本の誇る本場結城紬の重要無形文化財指定工程にあたる技術、工程です。習得まで10年くらいかかるといわれています。>

この技法から糸を染色し、たたき、木綿糸の部分を専用のゴム指袋でひっぱって取り除きます。すると下記写真の様になります。<技法たたき染め、ほどき(工程)>できあがった柄はかすり(絣)と言われ、小学校などで、染めたくない部分をゴムで縛ったような染め、あの技法を専門的かつ細かくした細工を国は指定工程にしたのです。しかし、逆に直接染料を使い、金属の棒で染色する技法(捺染)はスリコミといわれ、薄地に模様が入ったもの、技法をいいます。これは正式に国の技法ではなく、国の指定も受けていない工程です。その商品は文化財ではありません。このような、技法は産地が証紙ラベルにつけ充分な説明がないまま進められ、国から産地のスリコミを販売している者へ警告と処分が言い渡されました。下記は絣くくりによる模様と説明などです。最後の職人と後継者として私が変わりに正確なガイドをします。
タテ糸の整形、機巻きの写真
この機巻きの工程でミリ単位のタテ絣が肉眼でみえる。柄の細かさによって、それぞれ80,100,120,180,200と数える。亀甲がヨコにいくつはいるかで決められている。数字が大きいほど細かい。ミリ単位の手仕事絣くくり

白く残った部分が絣です。いわゆる木綿糸でくくって、染色を防ぎ、柄となったものです。この細かさは幅およそ40cmに80〜180個くらい縛り、柄にします。この作業は、神経と根気が必要な上、経験や情報をたよりに図案をみて作業していくのです。気が遠くなる作業の一つでこれで、絣くくりは防染の連続であることと細かい作業であることが分かります。こうして本場結城紬の柄は昔から作製されてきました。緯糸もくくられて柄となり、本場結城紬の質は今現在も保たれていきます。柄は織りによってこくこくと姿を表します。<上記はタテ糸の拡大、物体繊維から40cmの距離の絣>
絣くくり詳細のページ
手紬糸を80本くらい束にしたものを木綿の糸で絣くくりします。

これが絣くくりしたものです。

一日2000カ所、総柄、飛、ベタと絣くくりによてなされるが、数えきれないほど縛る時がある。
染色すると左のように絣くくりした部分だけが残り柄となります。この写真は緯の絣です。
<絣くくり綛>写真 糸車で左上写真の様に綛にします。
綛にした絣糸を管に巻きます。 このように管に巻いたらヨコの絣糸は終です。
昭和時代の絣くくり 昭和時代は外で墨付けを行なっていた。
<竹>
竹(たけ)、絣括り墨付けに使う商売道具(竹べら)。
写真左の竹べら。仕事を始めた時、父から授かった。まだ腕が未熟であるが、この竹べらは写真では分かりにくいが、使い込んで味のある上品な竹の艶色に変色している。写真右は、自分で、竹を鉈(なた)、のこぎりで、竹一本たおし、丸みの無い部分だけ奇麗に抽出した。以下、写真左の竹べらを使います。絣くくりはこうして竹べらを使用してきた。
竹べら裏表関係なく、手に持ち、紙を用意しました。
紙に真っ直ぐ落とします。(竹べらに墨がついています。)
墨の跡が残ります。仕事で道具を見ればわかる、といいます。仕事初めのころでしたら、左のような跡が残ります。右が現在使っている竹べらです。何度かハンコのように付けました。 
見えにくいですが、写真中心のスラッシュが、自分の作った竹べらで墨の量も薄く付けられ、細かい柄の墨付けに適しています。現在、墨はお子様向きの洗濯で落ちる墨が販売されています。ですが使用した墨は大人用習字墨汁です。

<北村陵後継絣作品>

キの十字絣
蚊絣
菱中貫十字絣
中貫十字絣
オリジナルでも販売しています。

<湯通し、糊抜き Araihari>

本場結城紬は全て分業です。こちらの糊抜きの職人さんは、ベテランでさまざまな着物の糊抜きにたずさていらしゃるので、<目利き>です。ここでのゆ通しで着尺が糊抜きが行なわれ、ほとんどここの糊抜き屋(湯通し屋)を利用しますが、高齢化が進み生産ラインがなくなりつつあります。現在後継者不足を補うため産地では後継者がいくらか増え、技術習得のため習いにくる職人さんがみえはじめました。

上記写真は、ブラシ、お湯入れ、 お湯です。糊抜きにより乾いた着尺などみみ(着尺の白い部分)にすぅっとお湯を通し、仕上げます。伸子は織物に使うものよりシンプルでUの字になった細い棒に先端に針があります。風に吹かれてもしなやかで、すがすがしい気分になります。
上記写真、上<地機用伸子>下<糊抜き用伸子>
ここで、以前、本場結城紬の糊抜きは、小麦粉を抜くだけで、個人的に糊抜きを行なった方がいました。失敗に終わったそうです。この工程もプロでなければ出来ない技術です。本場結城紬ならではの湯通しです。またこちらの糊抜きをなされてるところがいくつか市内にあります。

<これが日本の誇る重要無形文化財技術です。国の指定技術その弐>

3、織る

織機(地機)<dibataori>について

結城紬は地機で織られています。特徴はタテ糸を腰でつり、必要な時にだけタテ糸に張力をかけます、そのため独特の風合いが出ます。
名 称 用   途
a 掛糸 糸綜こうで、下糸に掛けてある(下糸を上げるため)
b 筬<オサ>つか 筬をはめて、固定する木の枠
c 前がらみ 織れた紬を巻いておく
d 腰あて 腰でタテ糸を張るために腰に巻いてある
e 腰かけ板 織機に腰掛ける板
f 杼<ヒ> ヨコ糸をタテ糸の間に入れ、打ち込みます
g ヨコ管(糸) ヨコ糸が巻いてあります(杼の中に入っています)
h 管箱 針やハサミ等を入れておく箱
i 前板 織らない時に、前がらみ等を置く板
j ふんばり棒 足を突っ張るための棒
k 筬<オサ> 筬目にタテ糸2本が通してある
l 中つつ棒(2本) 上糸と下糸を開く棒
m さる 中つつ棒が上下に入っている
n 男巻<オマキ> まだ織らないタテ糸が巻いてある
o 機草<ハタクサ> タテ糸と一緒に巻いておく
p あげくさ棒 男巻きに巻かれた一番上の糸を上げておく棒
q 足引きひも 足に掛けるひも(下糸を上げる為
r まねぎ 足引きひもが縛ってあり(下糸を上げる為)
s あや棒 上糸と下糸で綾になっている所に入っている棒
t かけ糸つるし かけ糸が掛けてある棒をつるす
1、上糸だけ固定してあります。 2、1から下糸を掛け糸しているため、織手さんが引っ張る事で下糸が上糸と交差します。これは地機で、片口開口と呼ばれています。 3、織られた物が前がらみに巻き付けられます。

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